2019年10月18日金曜日

「仮名があるのに、なぜ漢字を使うのか」じゃない。むしろ「漢字があるのに、なぜ仮名を使うのか」を問え

『仮名がある』のに、なぜ『漢字を使う』のか?←見当外れの質問である


漢字は便利で実用的、効率的な文字だよく外国人(特に欧米人)から、日本語について
「なぜ、かな文字があるのに、漢字まで使うのか」という声が寄せられていますね。

もっぱら表音文字にしか目が慣れてない欧米人から見ると、漢字と仮名を混じって使う日本語の表記体系が複雑に見えるのは致し方ないでしょう。
(だからといって、勝手に漢字を非効率的な文字だと決めつけるのは大間違いですが…)

当然ながら、我々日本人たちが漢字を使う理由は、便利ですから。これだけです。
絵文字から進化した表語文字である漢字は、パッとその形象を目に捉えて一瞬で意味を掴むことができます。

このような漢字を特性を利用して、高い水準の語彙も比較的に容易く意味を理解して使いこなすことができるのです。

参考:なぜ漢字を使うのか? 便利で効率的な文字だから

冒頭の「仮名があるのに、なぜ漢字を使うか」という質問は、
「漢字は不便で非合理的だから、できるならなくすべきだ」
という間違った前提に基づく、全く見当はすればな質問です。


むしろ『漢字がある』のに、なぜ『仮名を使う』のか?を問うべし


「仮名があるのに、なぜ漢字を使うか」ではなく、むしろこう問うべきです。

「すでに漢字があるのに、なぜ仮名を使うのか」

そもそも漢字を日本語の語順に合わせて並べるだけで良かったのに、
なぜわざわざ仮名交じり文で書くのか、を考えてみるべきでしょう。

答えはもちろん、
漢字の長所を最大限に活かしつつ、その漢字が苦手とする所を補完するだめです。
日本語の特性に適合する形でですね。

世界に存在するどんな文字も、それぞれ長所と短所がありますね。

いくら漢字が便利で実用的な文字と言っても、決して万能ではありません。
漢字だって長所だけでなく、短所もあります。

漢字が苦手とする所は…
  • とっさに聞こえた言葉を、とりあえず音だけ書き溜めとく
  • 外来語(特に人名、地名)の発音を表記
  • 書き方がわからない単語を、とりあえず仮に表記しておく
…などです。こういう場合には表音文字を活用するほうが良いでしょう。


たとえば、どこからともなく「らりるれろ」という言葉が聞こえたといいましょう。
とっさに聞こえたその正体不明な言葉を、とりあえず音だけでも素早く書き溜めたい時に、どうしますか?

聞こえたそのまま「らりるれろ」とひらがなで書けばいいですね。

しかし、もし仮名が存在しなかったら、漢字で「羅利流礼呂」と時間をかけて書けなければなりません。これはさすが不便ですね。

まず意味は差し置いて、とりあえず音だけ、という局面では仮名が必要です。


また、外来語のためにも表音文字の仮名が要ります。

いくら漢字の造語力が優れていると言っても、この世界にある全ての言葉を100%漢字語で翻訳できるとは限りません。

特に(漢字文化圏以外の)外国の人名・地名は翻訳できるかどうか、そんな次元の話じゃありませんね。

「英国」「米国」など慣用的に使われているごく一部の漢字地名ならともかく…

たとえば、最近独立問題が再燃しているカタルーニャならどうなるでしょうか?

中国語ではカタルーニャを「加泰隆尼亞」と表記していますが…
ぶっちゃけ、一々漢字で書くよりも、カタカナで普通に「カタルーニャ」と表記したほうが効率的です。

外国の固有名詞は、大体の場合は素直に表音文字で書き込むほうが良いでしょう。


さらに、時には書き方がうまく思い浮かべない単語も出ますね。
パソコン・スマホの普及によって、手書きの機会が少なくなった今の時代には、
漢字の書き方がうまく思い出せない場合が多くなりました。
特に「薔薇の憂鬱」のような書きづらい漢字はなおさらです。

ここで仮名があるから、とりあえず「バラの憂うつ」と仮で書いておくことができます。
「薔薇の憂鬱」をどうやって正確に書くかは、少しずつ時間をかけてゆっくり覚えておけばいいです。


漢字と仮名は、相互補完的な「日本語の両輪」


「仮名があるのに、なぜ漢字を使うか」というのは、
前提からして筋が通ってない質問です。

逆に「漢字があるのに、仮名を使う」理由を考えるべきです。

漢字しか存在しない、のでもなければ
漢字を廃止して仮名だけ残してしまう、のでもなく

漢字と仮名が共に両輪のように存在してこそ、
漢字の長所を最大限に活かしつつ、
漢字が苦手とする所を仮名で補う形で
日本語をより効果的に表記することができるのです。